2012年4月10日火曜日

こんな症状の時には-泌尿器科学教室(京都大学医学研究科)-


以下の症状をみとめるときには、泌尿器科を受診する必要があります。

尿に血が混じる

血尿とは

「尿に血が混じってますよ!」と言われたことはありませんか?また、赤い尿が出たことはありませんか?"尿に血が混じること"は、体が発している危険信号で、尿の通り道(尿路)のどこかに何か病気があることを示しています。
尿に血がまじる状態には大きくふたつあります。一つは、尿の色が赤くなる状態で、これを肉眼的血尿といいます。二つ目は、色の変化は分からないが、健診等の検査にて血が混じっている(潜血陽性)と指摘された場合です。これを顕微鏡的血尿といいます。

血尿の原因について

血尿の原因としては、悪性腫瘍(がん)、尿路結石、膀胱炎などの感染症、腎臓の病気など色々なものがあります。悪性腫瘍としては「膀胱癌」や腎盂尿管癌が最も頻度が高く、その他には「腎癌」や「前立腺癌」の可能性もあります。尿路結石は、腎から尿管、膀胱内のどこかに石が出来る病気です。尿の成分が沈着して結石が形成されていきます。尿管結石の場合には、血尿とともにわき腹の痛みを伴うことが多いです。「急性膀胱炎」という尿に菌が入った状態でも、血尿が出る事があります。この病気は若い女性に多く、通常は血尿とともに残尿感や排尿時の痛みなどを伴います。その他、腎臓の病気としては、腎炎や特発性腎出血などがあります。
一方、毎年健診にて尿潜血を指摘される人も多いと思います。このような場合には、精査をしても明らかな異常が見つからないことの方が多いですが、必ず一回は検査を受けて種々の病気がないことを確認しておきましょう。


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血尿に対する検査について

血尿の原因を明らかにするためには、種々の検査が必要となります。検査は尿の検査(検尿や尿細胞診)や超音波検査など痛くない検査が中心です。また、時に膀胱の中を確認する必要があることがありますが、この場合でも最近は電子スコープ(軟性鏡)という細くてやわらかいカメラを使って痛みの少ない検査を行っていますので、外来の先生に相談してみてください。
血尿がある場合には、必ず一度は泌尿器科専門医の検査を受けてください。特に注意しないといけないのは肉眼的血尿の場合で、膀胱癌や腎癌などの悪性腫瘍の場合には、一回だけ血尿を認めるのみでその後は血尿が出ない患者さんがいます。この時にも体の中には病気が残っていますので、癌がないかどうか詳しく検査する必要があります。病気が早期に見つかると、内視鏡や腫瘍だけを取り除くような治療が可能になる場合があります。血尿の治療はもともとの病気により変わってきます。血尿の程度に関していいますと、顕微鏡的血尿で貧血になることはありませんが、肉眼的血尿が続くと貧血になったり、尿がつまってしまって出なく事があります。このような場合には我慢せずに直に泌尿器科を受診してください 。

"赤い尿(肉眼的血尿)が一回でも出た場合"には、必ず泌尿器科の専門医による診察を受けてください。

PSAが高い

ピー・エス・エー(PSA)ってなに?

「ピー・エス・エー」は前立腺特異抗原(prostate specific antigen)の英語の頭文字を並べた略語です。その意味のとおり前立腺という男性の生殖器官でのみ産生されるたんぱく質です。そもそもは前立腺の腺細胞から前立腺の腺腔内に分泌され(図)、精液の中に混じって精液をさらさらにする作用があると言われています。血液検査で測るPSAは、本来は腺腔内に分泌されるものが血液中に"もれでた"ものです。血液中に"もれでやすい"状況になると血液検査での測定値が高くなるわけです。

 


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PSAが上がるのはどういう時か?

前立腺でしか産生されないPSAですが、「前立腺特異的」ではありますが「前立腺がん特異的」ではないことを知っていただきたいと思います。もちろん前立腺癌では上がることが多いわけですが、他に前立腺肥大症や、前立腺炎、尿道にカテーテルなどがはいった状態(物理的な刺激)、尿が全くでない(尿閉)などの排尿状態の極端な変化は、PSAの値に影響をおよぼす可能性があります。ですから、少しくらい高い値であっても必ずしも「がん」ではありません。ただ、がんではなくてもなんらかの変化が前立腺におこっている可能性は高いわけですから、泌尿器科専門医の受診は必要だと思われます。

PSAの基準値は?

PSAの基準値としては一般的に4.0ng/mlという値が用いられています。教科書でみますと、がんの発見される割合はPSA値が4ng/ml未満でも50人に1人、4〜10ng/mlのグレーゾーンと呼ばれる値で4人に1人、10ng/ml以上になると2人に1人とされています。当然のことながらさらに高値になればなるほどその割合は高くなります 。

血中PSA値は変動するものである

先に述べましたように前立腺の状態はいろいろな影響をうけますので、自覚症状の変化は特になくても採血時の全身状態などで小さな変化はあります。また測定するキット(方法)によっても多少の違いはあります。ですから少しくらいの変動はあたりまえのことと考えていただいて良いと思います。ただ、例えば同じキットで毎年測って、毎回上がっているような場合には要注意と考えられます。


大豆の原因がんを行います
わが国でも前立腺がんの罹患率が増加していることから、最近マスコミや健康番組でも取り上げられる機会が増えています。血液検査でPSAがスクリーニングできるという簡便さから前立腺がん検診を推進する自治体も増え、一般医家でも検査されることが多くなってきました。
"PSAが高い"からすぐに「前立腺がん」ということではありませんが、なんらかの前立腺の病気がある可能性がありますので、ぜひ泌尿器科専門医を受診いただきたいと思います。前立腺癌、前立腺肥大症につきましては代表的疾患の中の「前立腺癌」、「前立腺肥大症」もご参照ください。

尿が出にくい・回数が多い

尿が出にくい、回数が多いといった排尿に関する症状は様々な原因でおこります。性別、年齢などによって原因となる疾患がわかれる傾向がありますので、それに沿ってご説明しましょう。
男性の場合、多くの場合前立腺という臓器が症状の原因となっています。中高年以降ならまず思い浮かぶのが「前立腺肥大症」です。もちろん症状は同じでも、放置できない「前立腺癌」という病気が合併している場合もあり、最近増加していますので注意が必要です。若い方なら「前立腺炎」が原因かもしれません。
一方、女性特有の原因としては、おなかに力の入った時におしっこの漏れを伴う「腹圧性尿失禁」という病気の一症状かもしれません。他に原因の見当たらない場合、間質性膀胱炎という原因不明の慢性疾患が存在する場合があり、この疾患も女性に多く見られます。
老若男女共通に見られる疾患としては、「膀胱炎」、「尿道炎」といった感染症があります。この場合は排尿時痛を伴うことが特徴です。その他、糖尿病などの生活習慣病や脳梗塞の後遺症などによって排尿に関する神経に異常をきたす神経因性膀胱という疾患もあります。

このように尿が出にくい、回数が多いという症状ひとつとっても原因は様々で治療も全く異なってきます。思い悩むことなく泌尿器科医にご相談ください。


尿が漏れる

尿が漏れる!症状も様々です。

女性のかたに多いのが、咳やくしゃみ、立ち上がった拍子などに尿が出てしまう腹圧性尿失禁。これは骨盤底筋という尿道を含んだ筋肉が緩むためにおこります。加齢や出産を契機に出現したりします。かなりの方ではトレーニングだけで直ります。他に薬による治療をおこなったり、漏れる量が多い場合には尿道周囲の補強をしてなおします。これは簡単な手術で行なわれます。腹圧性尿失禁のある方は実は多いのです。悩んでおられる方は、一度泌尿器科で相談されるとよいでしょう。
これまではTVT(テンションフリー膣テープ)手術というのが腹圧性尿失禁に対する主流の手術でしたが、更に新しく安全性が向上したTOT(テンションフリー閉鎖腔テープ)手術も当院で開始しました。(詳細については担当医にお聞きください)

また、尿意を催すと我慢ができずに出てしまうのが切迫性尿失禁です。軽症の場合、薬で症状が取れる場合が多くあります。重度の場合は、薬の内服だけではよくならないこともありますが、当院ではボツリヌス毒素の膀胱壁内注入という最先端治療も行っており、安全に効果を得ることができます。(詳細については担当医にお聞きください)

普段の排尿は普通なのに、自分の知らないうちに尿が出てしまうのが遺尿症です。子供で夜間眠っている間ですと"おねしょ"となります。排尿反射というのはもって生まれた膀胱本来の機能なのですが、脳がこれをコントロールする力がつたないためにあらわれます。心身の発達や精神的なストレスの影響も無視できません。時間とともに消失することが多いのですが、中には「膀胱尿管逆流」などの尿路異常などのひとつの症状のこともあります。

他にも自分で尿が出したいのに出せない、でも自分の意思に反して尿が少しずつ出てしまう奇異性尿失禁などがありますが、このような場合は全身に悪影響を及ぼすことも稀ではありません。すぐに病院を受診しましょう。

睾丸がはれてきた

正確には"陰嚢の腫脹"と表現します。
陰嚢内には、1)精巣(睾丸)、2)精巣上体(副睾丸)、3)精索(精巣を栄養する血管、精管)等が存在します。これらの部分に何らかの異常が生じた時に"睾丸が腫れてきた"と自覚するのです。睾丸の腫れが生じた場合、以下のような泌尿器科学的に非常に重要な疾患が潜んでいることがあります。恥ずかしがって、病院を受診しなかったり、かなり悪くなるまでほっておかれることも多いのですが、急いで泌尿器科を受診されることをお勧めします。


I. 痛みを伴った陰嚢腫脹

まずは精巣捻転症という病気を疑います。精巣を栄養する血管がねじれて血液が流れなく病気であり、一般的には学童期から思春期に突然発症することが特徴です。この病気の場合には発症から24時間以内に血管のねじれを解除することが必要であり、緊急手術を行うことになります。24時間以上ほっておいたような場合には、精巣が壊死して摘出するほかなくなることも多いため、専門医を至急受診していただくことが大切です。

同様の症状を示すもうひとつの病気に精巣上体炎(副睾丸炎)があります。こちらの病気のほうが年齢が上の方に多いのですが、この2つの病気を鑑別することは時に困難であり、緊急手術によって診断せざるをえないこともあります。精巣上体炎の診断がついた場合には、抗生剤の投与のみで軽快するのが普通です。 その他、ヘルニア(脱腸)のかんとん等により同様の症状が出現することもあります。

II. 痛みを伴わない陰嚢腫脹

様々な病気がこのような症状を呈しますが、思春期から40歳くらいの方の場合には精巣腫瘍(睾丸の癌)を念頭に入れて診察します。この病気は頻度としては低いのですが、非常に進行が早く転移しやすいのが特徴です。痛みもなく、また羞恥心から半年以上もほっておいた後に病院を受診される方もいますが、進行した場合にはその後の治療が困難になることもありますので、おかしいなと思ったらできるだけ早く泌尿器科を受診することをお勧めします。詳しくは代表的疾患の「精巣腫瘍」のページも参照してください。
その他、「精索静脈瘤」、陰嚢水腫等の疾患や、時に腎臓や肝臓の機能が低下している場合にも陰嚢部が腫れてくることもあります。

陰嚢の腫脹(睾丸が腫れてきた)を自覚した場合、精巣捻転症というような緊急手術が必要な病気や、精巣腫瘍(睾丸の癌)のように手遅れになると致命的になるような病気が隠れていることもあります。 繰り返しとなりますが、恥ずかしがらずにできるだけ早く泌尿器科を受診されることをお勧めします。



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