CRPS(複合性局所疼痛症候群:complex Regional Pain Syndrome) とペインクリニック
滋賀医科大学付属病院ペインクリニック科
病院教授 福井弥己郎(みきお)(聖:せい)
"何がシンスプリントの治療法ですか?"
CRPS(複合性局所疼痛症候群:complex regional pain syndrome) の診断基準は、1994年にISAP(国際疼痛学会)から示されているが、その感度は高い(98%)ものの特異度が極めて低い(36%)ことから、臨床的大きな混乱をまねいている。
2005年にHardenらにより感覚異常、血管運動性変化、浮腫・発汗異常、運動・萎縮性変化の4項目からなる新たな診断基準(感度85%)(特異度60%)が作成された。この診断基準はISAPが大きく取り上げ、今後世界各国で広く取り入れられることが予想される。
本邦においても厚生労働省の研究班が栄養障害、関節可動障害、感覚障害、発汗異常、浮腫の自覚症状、他覚徴候の項目からなる新たな診断基準を作成した(感度83%)(特異度79%)。CRPSでは病態の共通な症例を対象に発生機序や治療法を検討していくことが望ましく、その基準となると考えられる。
pychologicalテストや人格障害
CRPSの治療では、個々の患者ごとにCRPSの発症・維持に中心的な役割を果たしていく要因を考え、その病態に応じた治療を選択することが重要である。急性期か慢性期か、神経損傷が存在するのかなどで治療方針が異なり、慢性期においては認知行動療法などを加えた慢性疼痛への対応が重要となる。薬物療法では抗てんかん薬のガバペンチンが本邦でも発売され、大きな期待が寄せられている。
CRPSとはその名が示すとおり様々な病態が複合していると考えられ、様々な原因が考えられているが、発生機序のひとつとして中枢神経系の機能異常が考えらており、近年、脳イメージングを用いた研究によって様々な知見が報告されている。
不安障害の状態のフォーラム
CRPSにおける知覚異常の広がりには中枢神経系の関与があること、一肢に限局したCRPSでは、2点識別能の障害が、疼痛の改善に伴い正常化すること、罹患肢に対応した脳皮質の感覚、運動野の被刺激性が亢進していること、などが報告されている。アロディニアを呈する神経因性疼痛では、痛みの識別的側面に関与する外側系の機能が低下し、痛みの情動面、認知面に関与する内側系が活性化されことが示唆されているが、CRPSの治療過程では、痛みやアロディニアの改善に伴い、外側系のST・SU(体性感覚野)の機能回復がみられ、変化を生じた脳内の痛覚認知機能が生理的な状態へと回復していくことが報告されている。これらの研究は、脳内の痛覚認知機構の変化を評価することがCRPSの治療戦略の重要なカギを握る可能性を示唆して� �る。
核磁気共鳴スペクトロスコピー(MRS)はMRI装置を使って脳内の代謝物質を非侵襲的に測定する方法で、脳内神経機能を直接評価することが可能である。我々はMRSを用いて痛みの認知・情動的側面に関与する前頭前野、前帯状回の局所脳神経機能を測定することによって、CRPSの病態を評価する試みを行っており、その成果について概説する。
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